Bonjour.
前回のトピックでご紹介した「再装幀」ですが、これとは別に「修復」という作業も本の保存と深く関係しています。再装幀と修復とで異なる点として、前者は既存の表紙を破棄して新しい表紙を取り付けることを指し、後者は既存の表紙を残すために痛んだ部分に治療を施すことを意味しています。今回は後者に着目して動画を補足していきます。
※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。
表紙(厳密には平と呼ばれる部分)と本の背中の間が特に傷みやすく、革表紙の本のほとんどはまずここから劣化していきます。動画で説明の通り、単純に経年劣化によって革が乾いた結果分離してしまうだけでなく、本を読む際に必ず開閉が発生する箇所なので、常に負担がかからざるを得ずこのような破損に至ってしまう場合があります。現在は溝付けと呼ばれる作業が発生したことと、表紙の素材に革ではなく布や紙が多用されるようになった結果、物理的にこの現象は起こりにくくなっています。要は今回分離した部分に溝がついており、そこにはボール紙のような芯が入っていないので、割れる心配が無いのです。皆さんがお手持ちのハードカバーの本は、ほぼ例外なく溝がついているはずです😄 まぁこの辺りは本自体の機構を認識していないと中々理解に苦しむ部分ではあるのですが😂
で、こちらが修復した本😍 基本的に修復には和紙を使用するみたいで、これはヨーロッパの方でも一般的になってきていると製本家の方からは聞いています。でもそのまま貼り込んでいるだけだと修復痕が丸わかりなので、事前に絵具でもって表紙の色に合った着色を和紙に施してから、外れた平と背中の部分の亀裂に沿って接着するという流れになります。また和紙は事前に喰い裂きという紙の四方をゲジゲジにしておくことで、より吸着性が高まります。ちなみに和紙が伝わる以前の西洋では、紙ではなく革で修復する方法が採られていたようです。書斎に一冊のあるので、写真で紹介しておきます😁
白くなっている部分が、修復箇所です◎
前回の再装幀にしてもそうですが、本のページが外れた、とか、表紙の隅が曲がった程度で本を廃棄するなんてことは、19世紀以前の社会では考えられない行為でした。日本にしても例えば明治大正期に出版された本で傷がついたものは、何らかの形で補修されて今も古書市場で流通しているものが多いです。単純に一冊の本の値打ちがあったのみならず、本そのものへの愛着が強かったからこそ、なるたけ後世に遺していこうとする先人の想いが垣間見えるのが修復の妙味です😊
おわりに
何気なく書斎に設置してある本も、入手した時点でかなり劣化が進んでいるものも少なくありません。特に触れるたびに革がぽろぽろ剥がれてしまったり、酸性紙の紙が空気と触れて劣化し触っただけで崩れてしまうようなものは、手の施しようがありません。それでも和紙を貼りこんだり重ねたりしながら少しでも活用できるよう足掻いています😂 実は蔵書票関連の研究書なんかはどれも結構ひどい有様で、読むよりも前に修復から始めたりしているんです😂 美しい装幀の裏側に潜む修復の面白みが少しでも伝われば幸いです◎以上でーす。
動画の全編は下記となります。ついでにチャンネル登録もらえたら嬉ちーなと思うこの頃です。
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