装幀におけるマーブリング

Bonjour.

マーブリングとは、絵具で描いた水面の幾何学模様を、特定の用紙にすり取る技法を指します。マーブルとは「大理石」の意で、そのような模様を絵具で表現することからマーブリングと呼ばれます。発祥は現在のトルコとされており、約1000年ほどの歴史があるともいわれています。現在も変わらず生産されているマーブリングは、本の装飾に長らく使用され続けています。今回は、マーブリングと本の関係性について、簡単に紹介してまいります。

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

こちらは、1862年に出版されたスウィフトのガリバー旅行記。19世紀に挿絵画家として活躍した、J.Jグランヴィルの挿絵がふんだんに盛り込まれている一冊です。

こちらの本には平(表表紙と裏表紙)、見返し(表紙の裏の部分)、三方(天・小口・地と呼ばれる本の淵の部分)の大きく三カ所に、マーブリングが施されております。平に使用されているマーブリングは、もしかすると今は再現できない模様かも?19世紀から20世紀初頭にかけて、劇薬を使用して作る模様があったそうで、それに少し類似しているように感じます。見返しと三方のものは俗に櫛目模様と呼ばれるもので、マーブリングの柄としては一般的なものです。

こちらは19世紀に出版されたバルザック作の艶笑短編集。エロチックでナンセンスなコント集といったところです。日本語では岩波文庫で読めます。平のマーブリングは、二重マーブル?と推測されます。或る模様を紙にすり取り、その後、別の模様を用意して、その上に先ほどの紙を載せて作ります。見返しは、変形のストーン模様。ストーンとは文字通り「石」を指す言葉で、石とは冒頭で言及した大理石のことを表しています。マーブリングの中では最も伝統的な模様とされています。18世紀以前の本に使用されているマーブリングのほとんどは、このストーン模様です。

ちなみに、三方のマーブリングは、主に18世紀以前の本に見受けられます。19世紀以降は、マーブルに代わり、動画に見える「純金(本金)」を三方に貼り付けることが一般化しました。業界用語では、「天金」「三方金」などと呼称されます。日本でも、洋本文化が定着した明治後期頃より、金を使用した本が出現し始めました。

おわりに

マーブリングを見ていると、本というものは一人で作り上げるものではないということが、改めて理解されます。革をすく職人があり、本を綴じる職人があり、本をプレス職人があり、そしてマーブリングを制作する職人がありと、本の装幀は明確な分業制で成り立っていたのです。一冊の本の価値が計り知れなかった時代の話です。おしまい。

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