革で作られた蔵書票

Bonjour.

これまでこちらのジャーナルを閲覧された方はお分かりのことと思いますが、蔵書票は原則として「紙」で作られます。蔵書票を貼り付ける先の本も、そのほとんどが紙で作られておりますので、相性の良さから紙が選択されるのは何ら不思議ではありません。その例外としまして、「革」で作られた蔵書票というものも、僅かながら発見されています。今回は、私の書斎に設置されている蔵書に実際に貼り付けられた、革の蔵書票を紹介してまいります。

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

本の所有者を示す印であるEX LIBRIS(エクスリブリス)の下には、W.A.Foyleの名が見えます。正式名は、William Alfred Westropp Foyle (1885–1963) という人物で、兄のGilbertと共にイギリス有数の本屋チェーンを築き上げた、やり手のビジネスマンだったようです。1903年に自身のブックショップをオープンし、1920年代には、英国を代表する本屋街であるチャリングクロスに進出しました。その後「The people’s bookshop」のコンセプトを掲げ、いつでもどこでも本が身近に手に入る環境を目指しました。一時期は、南アフリカのケープタウンにも支店があったとのことです。

修道院の名称をビーリッヒと読んでしまいましたが、正しくはビーリーと読むそうです。12世紀に建造された修道院で、長い在位中戦争に明け暮れていたエドワード一世も、巡礼に訪れた記録が残っているようです。Foyle氏はこちらの修道院を第二次世界大戦後に購入し、自身の蔵書を保管しておくプライベートライブラリーとして使用していました。彼の死後は、娘がこちらの修道院に暮らしながら蔵書を管理していたそうです。

票主(蔵書票の所有者)ばかりに説明が飛んでしまい、本来のテーマであった票の素材に着目するのが遅れてしまいました。。動画で言及の通り、「牛革」に箔押しされています。動画ですと分かりづらく恐縮ですが、しっかりと箔が押し込んであって、非常に精巧に作られた作品です。サイスは50mm×30mmほどで、蔵書票としては小型になります。真ん中に配置された盾形紋章は、恐らく捏造です。理由は単純。Foyle氏が紋章を持つ上流階級であったとするならば、書店など開業するはずがないからです。以上。

おわりに

こちらの本は、イギリスを代表する風景画家であるジョン・コンスタブルの総革装幀による画集で、1924年に限定200部で出版されたものです。世界有数の貴重書を所持していたFoyle氏のライブラリーに納められる栄光に浴した一冊が、我が書斎に今現在設置されているというのは、何とも言えない不思議な因縁を感じます。ちなみに、Foyle氏の書店は、今ではちょっとした観光スポットになっているそうです。それではメルシー、アビアント、ボンジュルネー!!!

ご興味がございましたら、youtubeのチャンネル登録にご協力頂けますと幸いです。動画の全編は下記となります。ご参考までに。

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