アンカット製本とは? 装幀の歴史を考える上で外せないポイント

Bonjour.

既に説明済みと思っていたアンカット(uncut)製本について、前回の動画を撮っていてまだ行っていない事に気が付き、忘れないうちに動画にまとめました😋 アンカットを説明するのに丁度都合の良い材料も見つかったので、この単語を全く聞いたことが無い方でも理解しやすいのではないかと思います。でも何か分からないことがあれば、気安く質問してくださいね!😂

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

まずは前回のおさらい。アンカット製本って何かなというと、動画の通り「ページとページが繋がってしまっている状態」、要は袋とじになっている製本様式を一般に差します。今ではこういった形で出版・販売されることは西洋においても極めて稀なのですが、古くは(フランスだと20世紀半ばくらいまで?)袋とじで逆に当たり前のぐらいの時代もありました。

こちらは1896年刊行された文芸誌、SAVOY(サヴォイ)。世紀末絵画の旗手の一人によく挙げられるオーブリー・ビアズリーが共同執筆責任者でした。それより少し前には、表紙が黄色であることから名づけられたイエローブックという文芸誌シリーズでも、いかんなく能力を発揮したことで知られていますね😃 各ページの小口(本の側面に当たる箇所)がギザギザになっているのは、この本が元々アンカットであったことを示しています。

で、このアンカット(uncut)をカット(cut)する専用に用意されたナイフが動画のペーパーナイフになります◎袋になっている本のみならず、封書を開封する用途にも使用されます。ペーパーナイフは15,6世紀頃から使われ始めたようで、恐らくグーテンベルクによる活版印刷術の勃興と共に必要とされたのだろうと推測しています😃ちなみにペーパーナイフは殺傷の道具として使用されたこともあるそうです、小説なんかの事件でも確かそんなシーンがありました😨

本が断裁されずに販売されていた理由の一つとして、昔の印刷業者はあくまでも文章の印刷のみに徹しており、断裁は別の領域という意識を持っていたのではないかと推測しています🤔 現在の本の断裁は、手製本のような一部の例外を除いては機械による断裁となりますが、当時はそんな都合の良い道具も無かったはずなので、出来るだけ多く本を量産することを優先して、断ち切りは本を購入した読者に委ねたのではないか?と考えています。

考えられるもう一つの理由は、本が印刷される→印刷された本が販売される→販売された本を読者が購入しナイフで切りながら読む→読み終わった本を職人に整えてもらう(3つめと4つめは順序が逆となることもあった)という過程が関係している可能性が濃厚です😁 そもそも製本と印刷は現在でも別個の領域です。ただ本の形になって書店で販売される時点ではどちらの作業も終了しているので、本を購入する側がそれを意識する必要がありません。一方でフランスではルリユール(西洋由来の装幀様式)という製本文化が古くから存在しており、本格的な断裁は製本家に委ねるといった流れが一般化していたことも、アンカット本の仕様に影響を与えていたのでしょう。ルリユールに関してはこちらが参考になりますかね😆

おわりに

今なら、「いちいちページごとにカットすんのかい、鬼めんどい!😂」とか突っ込みを入れたくなる仕様かも知れませんが、よくよく考えてみましょう。本に限らず、その昔は何をするにしても現在の視点からすれば死ぬほど億劫に思えることばかりなはずです。火を点けるためにいちいち焚き木を集めることから始まり、他の場所への移動は徒歩や馬車くらいしか選択肢が与えられなかった時代があったのです。ページを断裁する機械が導入されていなかったからこそ、こういったアンカットが普及せざるを得なかった部分もある訳ですね😁 デジタル全盛の世の中で、たまにはとことんアナログな作業に没入してみませんか?ではでは。

動画の全編は下記となります。ついでにチャンネル登録もらえたら嬉ちーなと思うこの頃です。

 

 

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