Bonjour.
「紋章」、そして「家紋」という言葉を聞いたことが無い方は、あまりいらっしゃらないと思います。ただ、紋章と家紋の「違い」について明確に説明できる方は、紋章学の本でも紐解いた方で無ければ、そう多くはありません。実際、殆どの方は紋章=家紋と考えていらっしゃるようで、これは家紋の仕組みから紋章を定義する思い込みから来ていると推察しています。では、紋章と家紋には一体どんな差異があるのでしょうか??
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まずは紋章。以前のトピックでも言及したように、古い時代(16~18世紀頃)に作られた蔵書票のモチーフとして、しばしば紋章が採用されています。意外と知られていない事実としまして、紋章は「個人に帰属するもの」といった大前提があるのです。個人個人に与えられ、それぞれのデザインも異なるので、記名がなくとも紋章だけでどの人間の蔵書であるかが分かるのです。したがいまして、蔵書票に限らず、家具や食器などの所有権を示す際には、歴史的にこの紋章が使用されてきました。
さらには、紋章を取得している事実それ自体が、当時は途轍もないステータス、すなわち、上流階級の証ともなったので、それを誇示したかった思いもこういった使用法に繋がっているのかなと推測します。特に英国では、長らく紋章がもてはやされており、現在もその名残が感じられる位です。
皆さんご存じの通り、家紋は個人個人に帰属する印ではありません。戦争の際の旗印などに描かれたように、特定の家系を示す要素となりますので、個人に与えられる紋章とは扱われ方が異なります。まぁ厳密に言えば、紋章も戦争の敵味方を区別する手段として考案されたらしいので、当初は家紋のような取り扱いであったのかもしれません。従いまして、家紋をデザインと採用している蔵書票は、所有者の名前も一緒に記載されるケースがほとんどです。そうでないと、個人までは特定出来ないということですね。一方紋章型蔵書票は、名前が記載されず、ただ紋章だけが刷り込まれているものも少なくありません。名前がなくとも、紋章だけで個人が担保されるという証明ですね。下に参考画像を添付しておきます。
名前の記載が無い、西洋の蔵書票
家紋と共に名前が記載されている日本の蔵書票
おわりに
日本の研究者が家紋を「紋章」と呼称して説明している点も、西洋の紋章=日本の家紋と思い込ませる一つの要因と思います。確かに西洋では、特定の街を象徴する紋章や、修道院を象徴する紋章というものも作られており、これらは当然そこに帰属している全ての人間が関係します。その意味においては、家紋とイコールと考えられなくもないのですが、基本的なルールに基づいて比較した場合には、やはり両者の差異が明らかに生じるのです。それと日本の家紋は、紋章ほど大事に扱われていない気がしませんか?自分の家紋を知らない方は、割合と多くいらっしゃるようですしね。紋章と家紋のステータスという点で比較しても、中々面白いかもしれません。ではでは!!!
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