Bonjour.
西洋では、およそ11世紀末頃より、「紋章」の概念が浸透を始めたと言われております。紋章の最大の特徴は、個人を特定出来る点にあります。例えば、或る紋章は、何々家の何々さんの長男、長男の紋章に他のデザインが加わると次男といったように、同じ家族であっても所有する紋章は異なります。「同じ時代に同じ紋章が二つあってはならない」が、紋章を形作るうえでの大前提となるそうです。そういった訳で、紋章は本の所有者を特定する蔵書票にも大いに活用されました。
※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。
紋章を知らなければ蔵書票を理解したことにはならないというのは、ちょっと大げさな言い方かも知れませんが、それだけ紋章型の蔵書票は数多く残っています。15世紀中葉から18世紀くらいまでの間に制作された蔵書票の半分以上は、紋章型で占められているといって過言ではないです。また紋章は蔵書票のみならず、椅子の背もたれに刻まれたり、陶器に彩色されたりと、所有者を示すために汎用的に使用されてきました。
紋章は英語でcoat of arms(武具の衣)と呼ばれ、武具とは具体的に中央の「楯」のことを指します。マントリング、コロネット、デクスター、シニスターなど、楯の周囲を飾る様々な要素を含めると大紋章となりますが、紋章の所有者が誰であるかは楯を確認して判断します。ちなみに、楯内に描かれるデザインとして代表的なものに、ライオン、百合の花、十字(クロス)なとが挙げられます。実際には、クロスは別要素なのですが、説明がややこしくなるので、ここでは割愛します。
紋章は国民全員に与えられるものではなく、紋章院に申請を行い、受理された人間にのみ使用が可能となりました。審査は相当に厳しかったようで、かのシェイクスピアの父が申請した際には、受理されるまでに20年もの月日を要したとのことです。しかも、ある一定の地位にある者でなければ相手にもされなかった訳で、この辺りに英国の階級社会が未だ根強く残っている所以があるように感じます。ただし、こちらのトマス・ウルジーのように、成り上がりさえすれば出自が貧しくても認可される点では、下層民にも紋章使用者となる可能性が与えられていたと言えるでしょう。
おわりに
こうなることはあらかた予想してましたが、蔵書票そっちのけで紋章の話ばかりしてしまいました(笑)。蔵書票における紋章には、単に本の持ち主を特定するだけでなく、ある種の家系図的役割も果たしていました。要は本人どころか、その父親、母親、祖父、祖母、場合によっては十代、二十代前の先祖まで読み解くことが出来たのです。それではメルシー、アビアント、ボンジュルネー!!!
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