ドイツで作られた、15世紀の装幀本 その3 紙の素材・注釈の意味・印刷技術

Bonjour.

15世紀の装幀本の解説、第三回目、今回で最後となります。第一回と第二回に関しましては、下記リンクを参照ください。

ドイツで作られた、15世紀の装幀本 その1 本の「台」としての装飾

ドイツで作られた、15世紀の装幀本 その2 本の型押し・革の種類・蝶番

今回は本の内側、すなわち、印刷された活字のレイアウト、および、その特徴に関して言及しました。ラテン語が不案内ということもあり、中々至らない部分も散見されるのですが、どうぞ大目に見て頂けますと幸いです😘

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

基本ラテン語(一部中世ドイツ語で書かれているそうです)で書かれており、私の語学力では解読不能です。申し訳ない!🤣とりあえず分かっていることは、13世紀イタリアの神学者ボナベントゥラの説教集であり、元々二巻に分かれていたものを一冊に合本(複数冊の本を一冊にまとめること)したもののようです。冒頭のRefugiumは、英語のRefuge(避難所)の語源で、神を崇める際に頻用される言葉です。例えばDeus Noster Refigium(神こそ我が心の家)などが、よく知られているモットー(座右の銘みたいなもの)です。

またIncipit(インキピット)には、「ここより始まる」といった意があり、活版印刷が始まる以前の写本(手書きの本)の時代より使われてきた、本を著す際の記述ルールみたいなものと思われます。要は、Incipit以降の文章が本文になりますよ、ということですね。意外と思われるかもしれませんが、その昔、本にはタイトルがありませんでした。なので、タイトルの無い古い写本や活版印刷の本は、このIncipit以降に印字されている単語をいくつか拾い上げ、それを仮のタイトルとして管理するのが一般的だそうです。

まず一つ目の特徴として、段落の冒頭は「印刷後に手書きで加えられている」ことです。まず活版印刷を行い、その後に一つ一つ職人の手により書き加えられている訳です。使用するインクは、今回のように赤もしくは青の場合が多く、赤はイエス、青は聖母マリアを象徴する高貴なカラーであることが由来していると推察します。こういった冒頭の装飾は「イニシャル」と呼ばれ、写本の時代より伝統的に行われてきた慣習でした。16世紀に突入すると、手書きで加えていたイニシャルは、木版画や銅版画などで表されるようになり、より本の量産に適した手法へと変容していきます。

もう一つの特徴は、手書きのメモが本の余白の部分に散見されること。こちらは、「スコリア」と呼ばれる習慣で、単純に書かれている内容への注釈(解説のようなもの)を入れたり、批判的な文言を入れることで、後々にその本を手にした人間が、書かれている内容を元に新たな本を著したり、更に批判的な解釈を追記したりと、様々な意図でもって欄外に記述したそうです。

スコリアの習慣は古代よりあったそうで、時の教皇や著名な注釈者の入れたスコリアは、聖書学の研究に欠かせないと聞いたことがありますが、この辺になると私も門外漢甚だしてくなりますので、今回のところはここまで!ちなみにスコリアは、単にアノテーション(注釈)でも業界では通じるようです。

おわりに

説明する機会を逸していたので最後に。15世紀に出版された活版印刷本は、俗にIncunabula(インキュナブラ)と呼ばれます。インキュナブラはラテン語で「初期」や「ゆりかご」という意味があり、要は「活版印刷術が勃興して間もない時期に出版された印刷物」を意味する言葉として、使用されています。厳密には、1455年にグーテンベルクが最初に印刷したとされる四十二行聖書から、1500年までに出版された印刷物全てを指します。ちなみに1500年以降に出版されたものは「ポスト・インキュナブラ」と呼ばれたりします。

それとスコリアって、言わば現在のSNSみたいなものなんじゃないかな~、とふと思ったりしまして。。勿論その間に、新聞やらレイディオやらテレビなんかが挟まっている訳ですが、その中でスコリアってのは情報を共有する最も古い手段の一つだったのんじゃないのかなと考えると、改めて情報って貴重だったんだなと再認識した次第であります。そんな訳で、このジャーナルも価値のある情報をドシドシ発信していきたいと思ってますので、そこんとこ宜しく!(古い人間ですみましぇん)

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