ドイツで作られた、15世紀の装幀本 その1 本の「台」としての装飾

Bonjour.

グーテンベルクによる活版印刷の実用が起点となり、15世紀は多くの印刷物が世に送り出されました。それに併せて、本の所有者も劇的に増加し、結果的に装幀のスタイルの発展にもつながりました。然しながら、余りに長い期間を経ているということもあり、その殆どが劣化してしまった関係で、現在15世紀の装幀を見られる機会は、非常に限られています。そういった中、ちょうど良い具合に当時の面影が感じられる、ドイツで出版された一冊を現地より取り寄せました~

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

本の四隅 + 真ん中に真鍮製の鋲が取り付けられています。これは、15世紀以前の装幀に典型的な様式です。装飾的な側面だけで見ても、当時の職人による技術力の高さに圧倒されますが、これらにはより重要な用途があります。すなわち、「本を設置する台」として機能していた点です。

情報量が多いせいで、中々理解しがたい部分もあるかと思いまする。まず重要なポイントは、本の保管方法は、原則として「平置き」であったという事実。すなわち鋲は、本を平置きした際、表紙と接地面が触れないようにするため、用意されたとされています。鋲なしに置くことも勿論可能ですが、そうすると表紙が次第に擦れて、徐々に劣化する恐れがあるってな訳です。表紙一つにしても、現在と全く価値基準が異なっており、多大なるコストをかけて制作していたので、容易に傷つけまいという想いが、こうした配慮へと繋がったのではないでせうか。置く場所に難儀した結果、平積みを繰り返してしまう我々の感覚とは、まるで比較になりませんね。

そして、当時はとにかく「重たい本が多かった」という点も、こういった装幀が好まれた一つの理由になるでしょう。13世紀に制作されたとされるギガス写本なんて、80kgもあるらしいですからね!最初から読ませる気ねーだろ!と言いたくなります。で、今回のも含め、重い本を立てて保管しておくと、長い年月をかけて「本の綴じが緩くなる」恐れがあるのです。昔の本は、そのほとんどが麻糸を使用し、ページの背にあたる部分と表紙とを繋いでいました。その状態で本を立てると、本のページを束ねた部分に、重力の関係から下へと行こうとする力が働き、最悪の場合糸が千切れて、ページと表紙とが分離してしまうのです。それを未然に防ぐための最善の措置が、本の平置きだったのです!

おわりに

嘗ては、日本の和綴じ本も平置きで保管されましたが、こちらは本の構造上、直立させることが難しかったことに起因しています。それに、重い本などもまずもって無かったので、平気の平左で平積みしても何ら問題無かった訳です。一方で西洋でも、古くから平積みを行っていたのかどうかは、皆目不明です。少なくとも、映画「薔薇の名前」の中では、14世紀の本が平積みの状態で映像化されてましたね。そんなシーンは、私を除いて誰一人注目していなかったと思うけど笑 こちらの本も、私の書斎に常時置いてありますので、触れたい方は気軽にお越し下さいね~でわでわ。

ちなみに、以前紹介した15世紀本のトピックはこちら

興味がございましたら、youtubeのチャンネル登録にご協力頂けますと幸いです。動画の全編は下記となります。ご参考までに。

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