Bonjour.
前回に引き続き、聖職者の蔵書票を紹介します。今回は17世紀に制作されたもので、19世紀末に出版された一冊「GERMAN BOOKPLATE」の中の参考資料として差し込まれた、「銅版画」の蔵書票になります。要は、原画が本の挿絵になっているんですね。何て贅沢。。今では考えられませんね。前回のものよりも情報量が多い関係で、動画では説明を端折ってしまったところがあるのですが、それはこちらのページにて補足しますね。
※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。
前回も登場した「司教冠」、すなわち司教が典礼など公式行事の際に被る帽子が、しゃれこうべの上に乗っかっています。この司教冠が、修道院に関係する蔵書票であることを暗に示してます。ただし、必ずしもこの帽子が描かれたという訳ではなく、代わりに大きな十字架を画面の中央部分に配置した蔵書票もあります。それと、プロテスタントや他のマイノリティな宗派では司教冠を被らないので、彼らが蔵書票を制作してもらう際には、必然的に他の要素が求められたはずです。
少々動画がぼやけてしまって申し訳ないです。デザインが施された箇所の周囲を縁どっている白い枠内に、「ARSENIVS PRAEPOSTUS ET ARCHIDIACONUS CHEMENSIS」と文字が刻まれています。 蔵書票の所有者は、最初のARSENIVS(アルセニウス)。その下のPRAEPOSUTUSは、主任司祭?を表す言葉のようです。また、ARCHIDIACONUSは助祭(司祭を補助する位階)を意味するようですが、そうなると、司祭なのか助祭なのかどっちやねんと思うところであります。恐らく、ARCHIDIACONUSはその次のCHEMENSIS(修道院の名称)にかかっており、「司祭ARSENIVS、およびCHEMENSIS修道院助祭」となるのではと推測しています。基本は司祭だけど、特定の修道院においては助祭ですよみたいな?(誰か解読してください)
髑髏の下には、楕円型の紋章が刻まれています。右はARSENIVS、左は修道院の紋章です。以前、紋章は特定の個人を表す印のようなものと説明しましたが、実は個人だけでなくこういった団体組織などにも適用される場合があります。ある意味で、国旗なども紋章の拡大解釈と言えなくはないのです。日の丸を国旗に配した国家なんて、日本以外に無いですもんね(あったらごめんちゃい)。
さらに最下部にはモットー(座右の銘)のようなものがあり、「全てのものはいずれ死に、水のように消えてなくなる」といった文言が記されています。我々が生活を営んでいる現代と異なり、当時は絶え間ない戦争や不治の病(ペストなど)で死に絶える人が後を絶たなかったので、それら無常の儚さを表現する言葉や絵画が好まれた傾向にありました。MEMENTO MORI(死を忘れるな)などは良く知られていますね。それとCARPE DIEM(今日を楽しめ)なども、こういった無常感を端的に表す言葉だなと感じます。脱線失敬!
おわりに
実はこちらの蔵書票、制作者の名前もしっかりと彫り込んであります。動画だと分かりにくいですが、モットーの下に「L.K.S」とあり、これが制作者のイニシャルとなります。この時代は純粋な版画職人が蔵書票を制作する機会が多かったため、現在のようにわざわざ自身の名前を明記する習慣がありませんでした。出来栄えに満足していたからこそ、名前を残そうと思ったのかもしれませんね。それでは、メルシー、アビアント、ボンジュルネー!!!
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