Bonjour.
「蔵書票は書籍に貼り付けて使用するもの」とこれまで散々紹介してまいりましたが、今回は「貼り付けてあったものを故意に剥がした蔵書票」について、お話を進めてまいります。何故このような蛮行?に至ったのか、実は時代が進むごとに蔵書票が認知が高まり、それに合わせて蔵書票そのものの価値も高まったことに関係しているのです。
※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。
動画の冒頭で結論を述べてしまいました笑 つまり蔵書票の「コレクター」が、この剥がされた蔵書票を語るうえで外せない存在なのです。本来的な用途で考えれば、本の所有者を証明する実用本位の道具であったものが、19世紀後半頃よりそのデザインにも注目が集まり、いつしかコレクターズアイテムとしての側面の方が優越するようになりました。
俗に盾形紋章(coat of arms)と呼称されるデザイン。紋章は個人を識別する最も古い手段の一つで、原則として盾に描かれました。盾の形状で凡そどの国で作られたものかが判別出来るようになっており、こちらの楕円形はイタリアタイプに分類されます。盾の中央にはC , S , Aが絡み合ったアナグラムと思しきものが見られます。CASともCAS、もしくは、CASA(イタリア語で家?)とも読めるかもしれませんが、具体的な所有者は不明です。こういった文字を繋いだり重ねたりする表現は、主に18世紀頃の蔵書票に多いです。
裏を見てみると、何だか不思議な模様が。。と思ったら、これマーブリングなんですね。マーブリングとは、水や水溶液の上に所定の絵の具を垂らして模様を作り、そこに紙を載せて作る模様です。詳細はググってください。西洋では確か17世紀頃より、本の見返しにマーブリングした紙を使用する習慣が始まりました。模様にも無数のパターンがあり、動画のものは大理石とか墨流しと呼ばれる模様です。こちらのマーブリング紙の上に今回の蔵書票が貼り付けられていたことが、思いがけない裏写りによって判明した訳です。
おわりに
今回のように故意に剥がされたと見受けられる蔵書票も無数にある一方で、制作された当初より貼り付けられずそのまま現在まで残っているものもあります。いずれにせよ、一部の人間によるコレクター的意欲の発現が、蔵書票を貼り付けるものから「収集」する潮流へと推進したことは、紛れもない事実です。要は、蔵書票の美術的価値が着目されたのです。そしてその傾向は、ヨーロッパより遥か東に位置する黄金の国ジパングにおいても、伝達されて間もない時期に顕現します。それではメルシー、アビアント、ボンジュルネー!!!
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