蔵書票の「票主」

Bonjour.

蔵書票の世界で欠かすことの出来ない要素の一つに、「票主(ひょうぬし)」があります。票主とは、原則としてオーダーメイドである蔵書票を注文した「依頼主」を指しています。一方、英語ではpossessorやproprietorと、単に「所有者」と呼ばれるのが一般的です。今回は、蔵書票に刻まれた票主達をご紹介してまいります。

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

一冊目は、オスカーワイルドのsalome、英語版の初版です(1894年刊行)。票主は、ウイリアム・エドワード・バトラー。「his book(彼の本)」と印刷されていることから、或る一時期にこちらの本の票主であったことが把握されます。主に19世紀以降、英国では「英語」で所有者を示すことが多くなりました。それまでは、ヨーロッパ全土でラテン語表記が一般的でした。他には、「This book belongs to 所有者名」が、しばしば見受けられます。技法はオフセット?と推測されます。

二冊目は、The art of book. 主に19世紀における、珠玉の装幀と印刷の粋を集めた、愛書家垂涎の一冊です。票主は、LE PETIT PARISIEN、すなわち、私です。技法は銅版画(エッチング)。蔵書票の制作を依頼する際、先ほどのように個人名を入れるのが基本ですが、それとは別に個人を特定する徴があるならば、そちらを選択するケースもあります。例えば、個人出版社(LAMIA PRESS)や、特定のライブラリー(Cambridge Library)の票などが挙げられます。

最後は書籍に貼り付けていない頂き物。技法は銅版画(アクアチント・エッチング)。票主の名前から、ドイツの蔵書票と推測されます。票主だけでなく、作家名もその下に小さく刷り込まれており、その名前から、票主と血縁のある人間と分かります。過去に数点見かけた記憶があることからも、親族の票を制作することは特別珍しくはなかったように思います。アールヌーヴォー期に活躍した商業イラストレーターでは、ハロルド・ネルソンやアニング・ベルが血縁宛にに蔵書票を制作しています。

おわりに

ご紹介してきた通り、現在の票主はそのほとんどが「本名」で示されます。しかしながら歴史的に見ていくと、「紋章」で証明されることが大多数を占めていました。紋章は、現在言うところの個人識別番号のようなものだったので、それが描かれているだけで本の所有者が誰であるのかが明確になった訳です。さらに英国においては、個人を識別するのみにとどまらず、家系の歴史までもが紋章に刻まれる、すなわち、紋章は家系図の役割をも担っていたのです。それではメルシー、アビアント、ボンジュルネー!!!

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