Bonjour.
過去から現在まで現存している蔵書票の技法の殆どは、「版画」です。オフセットや現在主流となっているデジタルによる大量印刷が実現する以前、一個の画面を複製(コピー)する唯一の技術が「版画」でした。本に貼り付けるため、或る程度の数量が求められた蔵書票も、機械印刷が一般化する以前は、版画で作る他ありませんでした。しかし、技術が革新した21世紀においてなお、版画の蔵書票が多勢を占めています。
※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。
一冊目は、水曜荘刊行の「煙草放浪」です。煙草の歴史、種類、閑話等が、挿絵や現物(マッチのラベルなど)と共に紹介されています。本を開いていくと、途中木版画の蔵書票が貼り付けられているのが分かります。著者が、木版画家宮本匡四郎に依頼して作ってもらったものです。味わいのある多色刷りで、著者の煙草愛が伝わってくる幻惑的な作品です。戦前戦後と、日本では木版刷りの蔵書票が好んで作られておりましたが、現在では銅版画の方が割合としては多いように感じます。
二冊目は、フランスの画家ウジェーヌ・カリエールの画集です。カリエールは、極力色彩を抑えたセピア調の画面に、人物が浮かび上がってくるような独特な描き方で、私が好きな画家の一人です。貼り付けてある蔵書票は銅版画で、技法はエッチングです。票内の「de」が貴族を表す単語とされており、右下には貴族が所有する紋章と思われるものがデザインされています。ドイツですと「von」に当たるのかな?ただ、中には貴族を衒って紋章を捏造する輩もいたそうなので、実際に調べてみないと本当のところは分かりません。
三冊目は、ペン画家であるビアズリーが編集に関わった文芸雑誌「イエローブック」です。貼り付けられている蔵書票の技法は、恐らくオフセットです。版画独特の滲みや深みが少ない、のっぺりとした画面が特徴です。動画でも言及している通り、本が出版された時代と、蔵書票が貼り付けられた時代には、多少の誤差があると考えられます。これは他の本でもあり得ることで、例えば、16世紀に刊行された本に19世紀の蔵書票が貼り付けられているケースはざらにあります。
おわりに
蔵書票は版画で作られなければならない、と思い込んでいる方が後を絶たないようですのでお伝えしておきますと、そんなことは「一切」ありません。最後に紹介したオフセットしかり、手書きであろうと、デジタル印刷であろうと、所有者を示す役割が果たされていれば、それは紛れもなく蔵書票です。蔵書票が版画であることに拘るのは、あくまでも「票主」、すなわち、蔵書票の注文主の都合が大部分です。その辺に関しましては、近々別途説明したく存じます。それでは、メルシー、アビアント、ボンジュルネー!!!
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