Bonjour.
私の書斎で保管している蔵書票の中に、デザインは同じなのにサイズが全く異なる蔵書票というのがあります。一人の票主が多種多様のデザインの蔵書票を作家に作ってもらうケースはよくよくありますが、同じデザインの蔵書票をサイズ違いで注文する人は、現代ではまずいません。これは今回の蔵書票に描かれている紋章に関係する理由で起こったのだと考えられます。それとこの解説だけ行うと話がすぐ終わってしまうので、紋章の意匠についても分かる範囲で説明しています。では蔵書票を見ていきましょう。
※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございす。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。
動画では割愛しましたが、この蔵書票のスタイルはジャコビアン様式と一般に分類されます。ジャコビアンは17世紀前半の英国王ジェームスのヘブライ語読みで、ジェームス一世とその後数十年の芸術の様式を指す言葉として使用されています。ただ蔵書票におけるジャコビアンはもう少し範囲が広く、一定の様式にのっとって18世紀前半までに作られた蔵書票を定義する用語となります。ジャコビアンの特徴の一つが盾の周りを覆うように配置されたマントリング(いわゆるマント)で、後年のスタイルと比べて過剰に装飾されているものが多く見受けられます。
エスクワイアはサーと同様、一般に敬称に使用される言葉なのですが、元々は騎士の従者としての役割を持った人間を示していたそうで、文脈によっては特定の階級を意味することもあるようです。
動画内でルイ十三世とか言ってますが、完全に誤りです!この人英国人ですもんね、失礼しました。正しくは先ほど話したジェームス一世とチャールズ一世でした。彼らの時代に大臣を務めたエドワード・ニコラス(1593-1669)という同名の人物がおりまして、当時国家への貢献の印として動画の加増紋を授与された記録が残っています。したがって、この蔵書票の持ち主は彼の子孫に当る人物、厳密に言う本家の人間と考えられます。ちなみに親と子供の名前が同一であることは、海外では現在も珍しくありません。例えば〇〇シニア、ジュニアとかといった分類で父子を表現しますよね?
動画で通説と話していますが、その辺について言及していた(と思っていた)資料が見つからなかったので、これはあくまでも推測ということでご理解ください。申し訳ない<(_ _)>。まぁほぼ間違いないとは思うんですけどね、だってデカい本にはデカい蔵書票を貼り付けたい気持ちって、当時の紋章がどのように取り扱われていたかを考えると容易に理解できるのです。すなわち紋章というのは持っていること自体が名誉だったので、どうにかしてそれを目立たせたいと企てたなら必然的に大きくするだろうと想像がつく訳です。しかも加増紋という特別な印まで得ている蔵書票ならなおさらだったでしょうね😁
恐らくこういった同じデザインでサイズ違いの蔵書票を作るケースというのは、19世紀前半でほぼ終了したと考えられます。より具体的に言うと、紋章がちやほやされていた時代の終焉と共に消え去った習慣のように思います。以前ジャーナルで解説した通り(紋章と家紋との差異)、日本の家紋と比べて紋章は社会的地位の高さを証明するアイテムとして機能していた点が、今回の蔵書票が作られた主な理由と私は信じています。では!
動画の全編は下記となります。ついでにチャンネル登録もらえたら嬉ちーなと思うこの頃です。
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