Bonjour.

これまで散々説明してきた通り、蔵書票は原則一人につき一デザインです。蔵書票は元々は個人を識別する紋章から発展したアイテムで、オーダーメイドで作られるのが基本です。国外の書店などで販売されている誰でも使えるものを除き、現在も特定の人物に対してその人だけの蔵書票が作られ続けています。その前提とも言える条件の中、一つの蔵書票に対し二人の票主が存在している変わり種がありましたので、それらのデザインと作られた経緯を見ていきたいと思います。

 

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございす。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

 

 

同じ蔵書票なのに挿入されている名前、すなわち蔵書票の持ち主である票主が異なっています。一枚目のものはCorrard(コレール)という医師を生業にしていた十八世紀の人物です。蔵書票は銅版画(エングレーヴィング)で作られていますが、下の欄の文字は全て手書きです。また蔵書票のスタイルとしては一般的な紋章型ですが、今回のケースから考えると恐らく特定の人物に属する紋章ではないと思います。紋章型の蔵書票についてはこちら

 

先ほどの蔵書票の票主はコレールでしたが、こちらの蔵書票にはグルメ(Grumet)と記述されています。グルメもコレールと同じく医師だったようです。

 

蔵書票を作る職人にとっては、同じデザインのものに対して何人もの票主から注文があればあるだけ単純に儲けが増大します。従来通り、一人一種類の蔵書票制作よりも圧倒的に手間が省けるので、なるたけ積極的に注文を取りたかったのではないかと推測されます。もしかするとこの蔵書票も二人どころか三人、あるいはもっと多くの人々に名前だけを置き換えて提供されたのかもしれませんね。ただし最後に申し上げた通り、十八世紀の時点でこういった汎用性のある蔵書票が数多く制作されていたという記録は見たことがないので、かなり珍しいケースと言えるでしょう。

 

おわりに

 

今回のように紋章型の蔵書票であるのに複数人で共有しているものは、特に珍しいと考えられます。紋章は原則一人につき一個と厳密に定められています。一つの例外として考えられることとして、この紋章は個人ではなく特定の団体を示している可能性もあります。例えば医師のアカデミーか何かを象徴する紋章であったとするならば、同業者の二人は同じ紋章を共有出来る可能性もあるのですが、その点を考慮したとしてもやはり全く同じデザインの紋章が入った蔵書票を使用するケースは、私自身これ以外に記憶にありません。それだけ紋章の機能が個人に帰属していたとも言えるかもしれませんね😊🤐以上となります。

動画の全編は下記となります。ついでにチャンネル登録もらえたら嬉ちーなと思うこの頃です。

LE PETIT PARISIEN

(恐らく)日本で唯一の活動をしています。

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