月日の経過と共に衰えゆくのは人間だけに限りません。本も永遠の命を保証されている訳では無いので、環境の変化や不意の事故などによる劣化は免れません。恐らく現代人の感覚からすると、何らかの原因で壊れてしまった本をわざわざ直してまで大切に保管しておこう、なんて気持ちはほぼほぼ起こり得ないのではないでしょうか?? 一方で遠い昔は本が情報としても物質としても貴重でしたので、壊れたから捨てるなんてことは逆にあり得ませんでした。今回は壊れた表紙を捨て新しい表紙をあつらえる「再装幀」について紹介します。
※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。
本はジョン・ゲイという18世紀を代表する劇作家の寓話集「FABLES」です。1793年に刊行され、古典的な英語が使用している関係でかなり読みづらいです。かなりがジョン・ゲイは代表作乞食(ベガーズ)オペラで一躍時の人となりました。今回の動画では紹介しませんでしたが、口を開いた人間が特徴的な口絵の銅版画は何とウイリアム・ブレイクが彫っています。ブレイクは英国を代表する詩人としてその名を残していますが、実は銅版画職人が本職でした。死後に神格化されるほどに評価が高まった人で、生前は結構不遇だったそうです。ちなみにFablesは正しくはフェーブルと発音するらしいです。今更ですが英語の発音ルールって滅茶苦茶過ぎません😂?? そんなんわかんねーよ!泣
1793年に出版された本、要は18世紀に出版された本なのに、19世紀以降の表紙が取り付けられているといったケースは、大抵の日本人にとっては理解しがたいと思いますが、西洋では近年まで至極一般的なことでした。理由として考えられるのは、最初についていた表紙が傷み、修繕の一環としてそれを取り外して新たな表紙をあつらえた、です。これを俗に「再装幀」、もしくは「リバウンド」と呼びます。例えば世界一のブックコレクションで有名なヴァチカン図書館に保管してある本は、元の表紙が劣化した結果かなりの数が再装幀されています。もう一つ考えられるのは、元々表紙がついておらず、19世紀以降に初めて表紙を取り付けた可能性です。
装幀は皆さんが考えているよりもかなりややこしい概念です。参考までにこちらの動画にて、装幀という行為について言及しています。
こちらが典型的な18世紀的装幀。牛革を使用しています。ちなみに19世紀以降になるとヤギ革を使う本が劇的に増えます。古い本であればあるほどに総革という、表紙全体に革を使用する装幀を採用していました。もちろん19世紀以降でも総革本は多く作られましたが、今回のようなコーネル装や背中のみに革を使用するクオーターバインディングの製本がより一般化しました。要は印刷技術の発展により本が沢山刷られるようになり、一つ一つの表紙に手間をかけない簡素な装幀が好まれるようになったということですね😊
今回のトピックは、西洋式の本来の装幀という概念に触れてこなかった方には分かりづらかったかと思います。装幀とブックデザインをごちゃまぜにしている日本の出版社が、皆さんの理解を阻害しているのは間違いありません。というか、出版社に身を置いている人間すらこのことを全く知らない場合も少なくありません。装幀という単語への無理解が、私の活動の弊害にもなっているので、出版社で働いている人はもうちょっと勉強して下さいね!!笑🤪
動画の全編は下記となります。ついでにチャンネル登録もらえたら嬉ちーなと思うこの頃です。
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