Bonjour.

初期の蔵書票のほとんどは「紋章型」と呼ばれる、家系に伝わる紋章がデザインとして採用されていました。紋章は個人を特定出来るので、本の所有者を示す蔵書票との相性が良かったことが、そういった傾向を産み出したと考えられます。その後18世紀に入ると、紋章の他に「本」あるいは「本棚」がデザインの主題となっている蔵書票が数多く作られ始めました。その中には、当時の美術の潮流が色濃く見受けられるものも散見されます。今回紹介する作品も、18世紀ごろに顕著にみられる特徴が分かりやすく現れています。

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

書票学という学問がある訳ではないので、厳密な分類ではありませんが、古い書物を紐解いていくと、今回のような形式は「Library Interior」、すなわち、個人の書庫の内観を現した様式として定義されています。19世紀(主に後半)に至ると、様式云々を超えてデザインの自由化のような状況が発生するのですが、このLibrary Interiorはその前段階として私は認識しています。ちなみに、本が雑然と積み上げられているだけで、書庫であることを示す本棚が存在しない蔵書票は、book-pile(積み本)様式として分類する場合もあります。とはいえ、どちらの様式の要素も持っている蔵書票もあったりして、そういったものは当時の研究者たちを手こずらせていたようです。

ロカイユは本来「小石」などを意味するフランス語で、それらを敷き詰めたバロック時代のグロッタ(庭園の装飾)が、皆さんご存じの優美なデザインのベースとなっています。ロココは恐らくロカイユがなまって造られた言葉と思いますが、由来の詳細は不明です。(どなたかご存じでしたら教示ください) 実際には、石というより貝殻を用いた装飾が数多く見受けられ、それは蔵書票に関しても同様です。今回のものはちょっとそれとは異なりますが、18世紀の紋章を用いた蔵書票の周囲はこういった渦巻模様で飾るのが割と一般的で、これらもロカイユの一種と定義されています。

蔵書票の下部には本の所有者である、C(Carl).S(Stephan).JORDANの名前が刻まれています。でもよくよく見てみると、JORDANのJの部分がIと刻まれていてIORDANになっているんですね。実は「J」は15世紀頃作られた新しいアルファベットで、それ以前は古くから存在するIで代用されていました。またAMICOLUMは友人達を示す言葉で、これは本の所有を示す際に頻繁に使われてきた決まり文句のようなものです。この記述の通り、友人たちの間で本の貸し借りが行われていたと、15世紀に実在した画家が言及しているそうです(原書までは辿り着けてないので、あまり信用はしないでください)。その他、本を運ぶ天使などは、こちらのタイプの蔵書票で散見されるオブジェです。

おわりに

グロッタの語源は、我々が日常耳にする「グロテスク」だそうです。このジャーナルを更新するまで私も知らなんだです。。グロッタ様式はものによって醜怪な雰囲気を髣髴とさせるので、そこから転じてグロテスクが誕生したとのこと。今回の蔵書票の縁飾りにしても、得体の知れない奇妙な印象を感ずるといえば感じませんか? それではさよーおーなーらー。

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LE PETIT PARISIEN

(恐らく)日本で唯一の活動をしています。

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