Bonjour.
先日紹介しました、15世紀の装幀本に関するトピック、その2となります。情報量の多さのため、複数回に分けての説明とさせて頂いております。前回の記事はこちらをご覧ください→その1
二回目の今回は、装幀の大まかな仕様について見てまいりました。前回と同様、15世紀以前に特徴的な要素が垣間見てとれます。
※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。
装飾が見えづらく恐縮です。ミディアムブラウンの革表紙全体が、黒いアラベスク(植物が絡み合ったような)模様で彩られています。一見、革の上から絵付けしたようにも見えるのですが、実際には様々なデザインが施された金属のコテを熱し、それを革の上に押し込んで模様を作り上げています。日本では「空押し」と呼ばれるテクニックです。空押しは、印刷技術の勃興した15~16世紀の初期の装幀で顕著に見られます。その後は「箔押し」という、空押しを行う前に金箔を表紙に載せ、その上から熱コテを当てる技術が普及し、現在も本の装幀で時折見かけます。
箔押しは、見た目には優雅で高貴な印象を与えるものの、余り多用し過ぎると成金的な悪趣味感が増幅します。一方、空押しは質実とした重厚感が付与されますが、エスプリを感じる装幀を意識するのであればあまり向いてないように思います。それぞれ一長一短ある訳ですね。どちらが優れているかという議論は不毛です。ちなみに、下が箔押しです。(書斎蔵)
蝶番というよりは、単に留め具と表現した方が正しいのかもしれませんが、要はある部分と他の部分をジョイントする役目を持った部位のことを指し、主に分厚い本に用意される傾向にあります。湿気などの影響でページの紙がたわみ、結果として本全体が膨張することがあります。本が扇形に膨らんでたりしてしまったら、見栄えが悪いですよね?蝶番は、それを抑えつける役目として考案されたと考えられます。
ただ良くある事故の中に、この部位が「ごっそり」吹っ飛んでしまっている本の見かけることがあります。恐らく、本が開こうとする力に、それを抑えつけている力が負け、かつ革や金属の劣化もあいまって、こういった悲劇が起こるのでしょう。書斎にも該当の本がございましたので、参考までに写真を添付します。
表紙の革は恐らく牛、革の芯になっている素材はなんと「木材」です。革の張力に負けないようなしっかりとした硬材で、芯の厚みも尋常ではありません。16世紀以降は、ほぼほぼボール紙(厚紙)の芯へと移行し、現在まで続いています。西洋では紙の文化が伝わったのが13,4世紀頃らしく、しかもすぐに実用化はされずに、暫くは羊皮紙と呼ばれる、革を薄く削いで作られた用紙を用いていました。そんな事情もあって、厚紙を作る技術を確立するまでに苦労したような話を、何かの本で読んだ記憶があります。装幀から、西洋の製紙技術の歴史が見て取れる好例ですね。
本当は背中の仕様や、綴じの部分などにも言及したかったのですが、余りにもマニアック過ぎて閲覧者の需要に堪えないものになりそう笑 なので、今回は割愛しました。今回のような一冊こそ、私の書斎で実際に触れて頂きたいですねぇ。毎度呪文のように唱えていますが、本は五感で愉しむものであって欲しいと願っています。それが立体物の宿命ですからね。という訳で、いつでも触れにおいで下さいね。料金は取らないので安心してね♡ ボンジュルネー、ボンソワレー!!!
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