本の「角背」と「丸背」 職場訪問その6 (有)オピック 恩田則保さん

Bonjour.

本の背中の形状を表す用語として、「角背」と「丸背」があります。角背とは、読んで字のごとく、角背は、本の背の部分が角ばっている本、一方で丸背は、本の背の部分が扇状に丸まっている本を指します。書斎にある角背と丸背の本をファインダーに収めたので、参考までに見てもらうとご理解頂けるかと思います。左が角背、右が丸背です。左と比べると、右の背の方が丸まっていますね。

全ての本は、原則として「角背」からスタートします。丸背に加工する場合は、その角背の部分をトンカチで整形しながら、丸みを少しずつ出していくのです。今回の動画は、その辺りの作業の様子を収めたものとなります。作業者は、恩田製本所、恩田則保さんです。

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

何の変哲もない、ごくごく一般的な形状のトンカチにしか、素人目には見えません。恩田さんも特殊なものと仰ってはいらっしゃらないので、恐らく市販されているものでも十分なのでしょう。こちらのトンカチで、本の角の部分を丸くしていきます。俗に「丸み出し」という作業工程になります。

展開がスピーディーで分かりづらい部分があるかもしれませんが、動画の冒頭で角ばっていた背を叩くことで、徐々に丸くなっていくのが了解されるかと思います。本の左右からまんべんなくトンカチで叩き続けることで、綺麗な扇型の丸背を目指します。

ちなみに、足で固定するワイルドなやり方は、和洋関係なく恩田さんくらいしかやっていいないはずです笑 熟練した職人がなせる技とご理解ください。。

恩田さんの口より、「耳だし」という言葉が突如出現したと思いますが、恐らく、本格的な製本に携わった人以外で、この用語を知る方はいないと思います。これは非常に説明が難しい概念でして。。先ほどの丸み出しの作業を行った後に、本を万力に挟んだ状態で、丸くなった部分を外側に逃がしながらトンカチをあて、「キノコっぽい形」へと整形させる過程を指します。恩田さんは、「イチョウの形」と発言しています。皆さんからの「は?」という声がはっきりと聞こえてきました。(やべー!)幸いにも、youtubeにて耳だしの工程をアップロードされている奇特な方の動画を発見しました(やったー)

実は私自身、耳だし作業というものを実際に行ったことが無いので、こちらのやり方が正式なものであるかは判断しかねるのですが、ご覧の通り、綺麗なキノコ的形状に整形されてますね!素晴らしい◎耳だしは、動画内にて恩田さんが仰っているように、製本の画竜点睛である表紙をつける作業で、重要な役割を果たします(ボール紙の厚さだけ耳出しすると、表紙がまっすぐになる)。耳だしが中途半端だと、恐らく表紙と中身に不自然な隙間が生じて、本の強度に問題が生じます。実際製本してみないと、この概念は間違いなく理解不可です。という訳で、かくいう私も偉そうなことは何も言えましぇん。

おわりに

動画の終盤で、クータがうんぬんと恩田さんが説明されていますが、トピックの本旨と少々ずれる内容ですので、詳細は過去記事を参照ください。→「クータとは?」

余程特別な技術を要しない限り、たとえ初心者であっても、製本のレクチャーを受ければ、本を仕立てることは可能です。ただし、「美しく仕立てる」までには、計り知れない期間の修練が求められます。歴史的な製本も、多くは職人の領域に属します。こういった、一般には知られざる精巧な技術が、後世に多く残ってくれることを願います。万が一、機械で全く同じものが再現されたとしても、どこか味気なく感じませんか??そいでは、さいならー。 

興味がございましたら、youtubeのチャンネル登録にご協力頂けますと幸いです。動画の全編は下記となります。ご参考までに。

LE PETIT PARISIEN

(恐らく)日本で唯一の活動をしています。

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