装幀のスタイル1 ケンブリッジパネル

Bonjour.

18世紀の英国を中心として人気を博したとされる装幀スタイルの一つに、「ケンブリッジパネル」が挙げられます。ケンブリッジがその発祥であるのかは定かではありませんが、洋古書の歴史を振り返ると、一時期英国全土で頻繁に製作されていたことが分かります。今回は、書斎に設置されているケンブリッジパネル装幀の一冊をご紹介し、その典型的な意匠を垣間見てまいります。

※※必要な部分のみ切り出して紹介しておりますので、途中から動画が始まっている場合がございます。まずは動画からご覧になり、補足をお読みください。

今回紹介する一冊。「The treatise of Ancient and Present GEOGRAPHY Together with a SETT OF MAPS both of Ancient and Prefent GEOGRAPHY」といった、糞長ったらしいタイトルが与えられています。タイトル内にPresent と Prefent という単語が見られますが、これはいずれも「Present」です。18世紀は未だ単語の表記ゆれが一般的で、uとv, fとsは明確に区別されていなかったので、同じテキスト内であってもこういった事象が頻繁に起こっていました。

最初に、表紙の一番外側と菱形の部分をマスキング(紙か何かを使用して、色が染まらないにすること)し、残りの部分を黄土色で着色します。その後、黄土色に染めた部分をマスキングし、最初にマスキングした外側と菱形の部分を、ステインで着色します。また、単純にブラシで直接塗布していくというよりは、ブラシに塗料を載せて、ブラシを振るなり別の道具で擦るなりして表紙に塗料を落とし、全体にまぶしていくような感じで染め上げていきます。

波線に見える箇所は溝になっています。これは熱を帯びた湾曲したコテを表紙に押し付け、それを何度も繰り返すことで作られる模様です。溝の四隅には花を模したような柄が配置されており、こちらも専用の熱したコテを使用し、押し付けて作られた模様です。端の溝は、平べったいコテを繰り返し押し付けることで、本の表紙に平行な直線を作ります。日本では「空押し」と呼ばれる技術に相当します。

おわりに

単純に押し付けるだけなら、誰にでも習得できそうな空押しですが、現在のように機械を使用せず全て人力で作業を行っていた時代は、失敗の許されない工程だったので、箔押しや空押しは専門の職人が行っていました。ケンブリッジパネルは、未だ手工業が全盛であった時代に産み出された、珠玉の装幀芸術です。それではメルシー、アビアント、ボンジュルネー!!!

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LE PETIT PARISIEN

(恐らく)日本で唯一の活動をしています。

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