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ベリー公のいとも豪華なる時祷書

Bonjour.

先日、何を見ようとでもなくテレビを付けっぱなしにしていたところ、日曜美術館の放送が開始され、何気なく目を向けてみると、何と「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」の特集でした。慌ててスマホの動画で放送の一部を撮影致しましたが、こちらは著作権がからんでくるため、とりあえずyoutubeにはアップせず、wordpressの動画として紹介致します。なお、解像度の関係により画質が少々荒くなっております。それと、wordpressの動画は再生時間を指定して切り出せないので、いつもの話の流れとは少々異なることを、何卒ご承知おきください。

初めに、こちらの動画をご覧下さい。

こちらが「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」です。ベリー公およびオーヴェルニュ公であったジャン一世の指示のもと、約80年の歳月をかけて造られた、書物史に燦燦と輝く珠玉の一冊です。牛と思しき革を赤く染め、表紙の淵の部分に美しい金の箔押しがなされています。真ん中は、ベリー公ジャン一世のものと推測される紋章で、美しく装飾されています。ちなみに、本が完成したのは15世紀末とされていますが、こちらは恐らく16世紀以降に誂えた装幀です。箔押しの技術は、15世紀以前には確立していなかったというのが通説であるのと、箔押しのスタイルから見ても、かなり後年になってから装幀されたのではないかというのが、私の見立てです。

80年もの歳月をかけてしまったために、ジャン一世はおろか、最初に本の挿絵を担当したランブール兄弟までもが、本の完成をまたずに死去しました。制作は職人から職人へと継承される形で継続し、最終的にはジャン・コロンブと呼ばれる職人が完成させたとされています。写真は豚にどんぐりを与える場面。600年が経過した現在でも、飼育方法は変わっていません。

当時の挿絵に描かれる主体のほとんどは騎士や貴族の類であって、平民は取るに足らない存在として黙殺されがちでしたが、こちらの本では、越冬する平民の様子をテーマに据えた挿絵があります。終わりのない領主による搾取に苦しみながら、粗末な小屋で炊かれる火にあたって暖をとる人間たちの侘しさが伝わってくる場面です。ちなみに、中世平民の平均寿命は二十歳前後であったという研究があります。

前半は12か月それぞれの季節を象徴した挿絵が描かれ、後半は旧約・新約聖書の重要な場面を抜粋して紹介しています。キリストの受難に多くの紙幅が割かれているのは、信徒にとってそれだけ重要な出来事であったことを示しているように思います。写真は受胎告知のシーンです。

最後に、本の中でも特に有名な食事のシーン。テーブルの中心に鎮座している人物がジャン一世です。テレビでは言及がなされておりませんでしたが、中世ヨーロッパではカトラリーがいまだ充実しておらず、食事のほとんどは「手づかみ」で摂っていました。なので、こちらの挿絵の中にも、あるものといえばパンや肉切用のナイフと、それらを載せる皿しかありません。目を見張るような美しい召し物をまといながら、手づかみで食べていたと考えると、何だかちぐはぐな感じがして笑えませんか?

おわりに

他の追随を許さないほどの豪華絢爛さはさることながら、当時の風俗を垣間見る資料としての価値からも、ベリー公のいとも豪華なる時祷書は歴史的に重要な位置づけを今後も持ち続けるでしょう。可能であれば、一度お目にかかりたいところですが、図書館の非公開スペースに安置されているらしく、映像や写真にて永久に想像を膨らます他ないようです。それではメルシー、アビアント、ボンジュルネー!!!

時祷書を解説しているこんな動画も発見しました。参考までに。

LE PETIT PARISIEN

(恐らく)日本で唯一の活動をしています。

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